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公開されている、性犯罪者たちの顔
2003年07月21日アメリカには、一般にメーガン法( Megan's Law )と呼ばれている法律があります。この法律に基づいて、性犯罪者たちの個人情報がインターネット上で公開されています。地域によって情報の内容に違いはありますが、だいたい顔写真や、氏名、生年月日、住所、犯した犯罪の種類、人種、身長、体重、目の色、髪の色、などが公開されています。なかには刺青や体の傷などといった情報まで掲載しているところもあります。 公開の方法も、たとえば地図が表示してあって、適当な地域をクリックすると、そこに住んでいる性犯罪者たちが、一覧表になって表示されるようになっていたりします。つまり、アメリカの市民は、自分の地元のどこに性犯罪者が住んでいるのかということが、簡単にわかるのです。しかも、顔写真まで公開されていますので、変装でもしていない限り、「ああ、あの人が性犯罪者なんだな」と、すぐに個人を特定できるようになっているのです。 こういった情報は、インターネットで公開されていますので、アメリカの市民でなくても、世界中の人が閲覧することができます。私も、ネットサーフィンみたいな感じで、いくつかのサイトを回ってみたのですが、こういった写真の一覧表を何ページも眺めていますと、さすがにいろいろな事を考えさせられました。そこで、このページの下のほうに、いくつかのリンクや検索方法を書いておきましたので、この問題に興味のある人は、性犯罪者たちの顔を見つめながら、いろいろなことを考えてみてください。 まずは、いろいろなことを考える上で、このメーガン法というのはいったい何なのかということで、ちょっと調べてみました。メーガンという名前の由来は、性犯罪の被害にあった七歳の少女「 Megan Nicole Kanka ちゃん」の名前からきています。1994年7月29日に、ニュージャージー州に住んでいたメーガンちゃんは、近所の男によってレイプされて殺されてしまったのです。その後、この犯人の前科を調べてみますと、なんと過去に二回も性犯罪を犯していたことが分かったのです。二回とも、五歳の子供と七歳の子供に対して性的な攻撃を行っていて、いわば小児性愛の常習犯だったのです。メーガンちゃんの両親からすれば、当然のことながら、事前に性犯罪の常習者が近所に住んでいるということを知っていれば、自分の子供を守ってやることができたのに、ということになります。これは実にもっともなことであります。そして、両親の運動によってニュージャージー州では1996年にメーガン法が成立しました。その後、合衆国レベルでもメーガン法が制定されて、五十の州で性犯罪者たちの情報を公開するようになっています。 この法律の興味深いところは、犯人が刑務所から出所してきたり、近所に引っ越してきたときに、地元の住民たちに告知がなされることです。学校関係者や地域の住民を集めて説明会みたいなことが行われるようです。すると、ここで問題になってくるのが差別や人権の問題です。法律が施行された当初は、一部に過激な行動をする住民がいて、公開された性犯罪者を襲撃する事件も発生したようです。そこで、メーガン法ではこういった事態を防ぐために、性犯罪者たちへの差別や暴力は犯罪であるということが明記されています。ニュージャージー州では、就職や、保険の加入などで性犯罪者たちを差別したりすると罰せられるようになっています。 公開される性犯罪者は、おもに有罪の判決を受けた人たちですが、精神的な障害を理由に無罪になった人たちも公開の対象になっています。これは、再犯の危険性のある人の情報を公開することで、「市民の安全を守る」という考え方によるものです。 当然のことながら、この法律の周辺には、市民の安全を優先させるのか、あるいは性犯罪者たちの人権を尊重するのかという議論が渦巻いています。ですので、私もこの問題について考えてみました。 たしかに、性犯罪者にしてみれば、この法律というのは実に困ったものでしょう。仮に、心を入れ替えて人生をやり直そうと思っても、どこへ行っても周囲の目がついて回るわけで、いつも性犯罪者という目で見られることになります。しかも、インターネットで顔写真などの個人情報が公開されていますので、こういったことが精神的に相当な負担となるでしょう。そして、生涯にわたって、性犯罪者という烙印とともに生きていかなければならないのです。 しかし、このことは同時に再犯を防ぐことにもなっているのです。すっかり心を入れ替えたつもりでも、何かのきっかけでついついやってしまったという事態も考えられるわけです。性犯罪者というのは、同じような犯罪を繰り返す傾向があるようですので、情報を公開すれば、たしかに性犯罪者たちにとっては、再犯がやりにくくなるわけです。 しかし、忘れてはならないのは、公開された性犯罪者たちの影に、たくさんの被害者たちがいるということです。たくさんの被害者たちが、犯人によって人生を狂わされているのです。犯人に殺されてしまった人は、もう二度とこの世に戻ってくることができませんし、犯人から性的な虐待を受けた人は、それが原因で精神的な障害を抱えてしまったり、家庭が混乱したり崩壊したりしているのです。そして、生涯にわたって性的な虐待の問題を抱えながら生きていかなければならないのです。なんとかこの問題を乗りこえたにしても、そこには長い長い苦悩に満ちた日々があるのです。こういった被害者を、これ以上増やさないためであれば、犯罪者たちが忌まわしい烙印を背負っていかなければならないという問題が、はたしていかなる意味を持つのでしょうか。 メーガン法というのは、決して性犯罪者たちをどこかに追い出してしまおう法律ではありません。性犯罪者たちと共存しながら、地域のみんなで見守っていこうという法律なのです。私たちの住んでいる日本でも、性犯罪者たちは一般の人たちと共存して生きています。ただ、私たちは誰が性犯罪者なのかを知らないで生活しているだけなのです。しかし、仮に、近所に住んでいる子供好きのお兄ちゃんが、実は重症のロリコンで、子供に性的なイタズラを繰り返していて、過去に何回も逮捕されたことがあるのだということを事前に知っていれば、自分の子供を守ってやることもできるのです。しかし、私たちは何も知らされていません。無防備なままで、平和な生活をしているのです。 もしも、日本で性犯罪者たちの個人情報が公開されたら、どうなるのでしょうか。おそらく、アメリカ以上の混乱が起こるかもしれません。性犯罪者と共存するとは言っても、なまやさしいことではありません。日本は異質なものを排除する傾向が強いですし、某宗教団体の住民票を受け付けるかどうかでもめている国ですので、性犯罪者が引っ越すとなると、同じように住民票を受け付けるかどうかで、もめたりするのではないでしょうか。 さらに現実の問題として、性犯罪者が住んでいるというだけで周辺の土地の値段が下がったり、同じアパートの住民がみんな引っ越してしまったりした場合、いったい誰が損害の補償をするのか。近所の幼稚園や保育園がガラ空きになったらどうするのか。地元の町内会や、自治会は、はたして適切な対応をすることができるのか。こういった問題を考えて見ますと、なにも知らないでいたほうがいいのか、あるいはいろいろな混乱を乗り越えてでも性犯罪者がいることを知っていたほうがいいのか、非常に難しい問題です。 やはり、こういう法律を作るとなると、被害者の問題が広く認識される必要があるのではないでしょうか。日本では加害者の人権が尊重される割には、被害者の存在が無視されたりしています。最近になって、やっと犯罪被害者の問題が取り上げられるようになったばかりです。ですので、いずれは日本にもメーガン法のようなものができるにしても、まだまだ先の話ではないかと思います。 最後に、性犯罪者たちの写真を見ていて思ったのですが、どういうわけかヒゲを生やしている人が多いような気がします。何か関係があるのでしょうか。それと、数はまだ非常に少ないですが、女性の性犯罪者も掲載されています。アメリカでは女性の性犯罪者が増加傾向にあるようですので、ネット上に公開されるケースも少しずつ増えてくると思います。 ■ 公開されている例 ■
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