自分への語りかけ Ver. 1.1 1999/05/04
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境界例の原因とメカニズムを読んで、その仕組みを理解したら、その次の段階として、境界例からの回復を目指して歩き出しましょう。 境界例のメカニズムのなかで、すべてのパターンに共通しているのが「自分で自分を見捨てる」ということです。幼少のころから長年にわたって刷り込まれてきた、自分を見捨てるという態度は、日常生活の隅々にまで染み込んでいます。まずはこの自分を見捨てるという態度に気づかなければならないのですが、まるで「洗脳」されたかのように自分の心の中に深く入り込んでいるため、困難を伴います。そして、自分を見つめるという行為は見捨てられる苦痛を直視することにもつながりますので、無意識的に避けようとします。これは治療の専門家でも苦労するところです。ましてや、まったくの素人が、自分で自分の心にメスを入れるようなことは非常に困難です。理想からいえば、境界例に関した治療技術の訓練を受けた人から治療を受けるのが望ましいのですが、経済的な理由や時間的な問題から治療を受けるのが困難な人もたくさんいることでしょう。そういう人のために、「ある程度」問題を解決する方法について考えてみましょう。これは、特に軽症の場合には有効ではないかと思います。 自分への語りかけ まず、どうやって自分の中の見捨てられ感を見つけ出したらいいのかというと、一つの方法として繰返し自分に語りかけるという方法があります。これは、精神分析の知識がなくても、ある程度はうまく行くでしょう。「自分で自分を見捨てなくてもいいんだ」と繰返し自分に語りかけるのです。日常生活のいろいろな場面で自分に語りかけるのです。この自分への語りかけは、その言葉の背後にこんな意味を含んでいます。 親や他人から言われたからって、自分で自分を見捨てる必要はないんだ。 自分で自分を見捨てなくてもいいんだ。 お前はもう充分自分を見捨ててきたじゃないか。 お前はもう充分自分を傷つけて苦しめてきたじゃないか。 もう充分じゃないか。 お前はもう自分を見捨てなくてもいいんだ。 幼いころに間違った考えを刷り込まれたお前は、一生懸命頑張って自分で自分を見捨てて来た。 幼かったお前は、疑うことを知らず、けなげにも教えに忠実であろうとしてきた。 刷り込まれた教えに従って、本当に頑張って一生懸命自分で自分を傷つけてきたし、一生懸命自分で自分を無視してきた。 誰も褒めてくれなかったけど、お前は本当に良く頑張った。頑張って自分を見捨ててきた。 一人で大変だったね。辛かったろうね。 誰も認めてくれなかったけど、本当によくやった。 でも、もういいんだ。 お前が教えられたことは間違っていたんだ。 間違ったことを刷り込まれていたんだ。 お前はもう自分で自分を見捨てる必要はないんだ。 それは間違いだったんだ。 お前は、もう親とは別個の人間なんだ。 もう間違った教えに従わなくてもいいんだ。 間違った仕事はこれで終わりにしよう。 これからは自分で自分を大切にしよう。 これからは自分で自分を育てよう。 新しい仕事に取りかかろう。 こういう語りかけを、自分自身に対して繰り返し行なうことで、心の中になにか引っかかるものが見つかるかもしれません。そうしたら、それは新しい自分の発見につながるかもしれません。毎日、繰り返し自分に語りかけてください。「もう自分を見捨てる必要はないんだ」と。「もう見捨てなくてもいいんだ」と。
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