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(番外編)
俳優訓練について
  Ver 1.0 1999/08/12

 昔から俳優の能力は生まれつきの才能によるものとされていましたが、なんとか訓練によって俳優の能力を引き出せないものかと考えた人がいました。そして、俳優にとって必要な能力とは何かということや、その能力を伸ばすためにはどのような訓練方法がいいのかと言ったことについて、ひとつの訓練システムを考え出したのです。これはモスクワ芸術座の設立者であるスタニスラフスキーによるもので、俳優の内面的なリアリティに重点をおいていました。日本では、昔から歌舞伎などに見られるように、外形的な型に演技の重点がおかれていたのとは正反対のことです。

 このスタニクラフスキー・システムを学んだアメリカ人が、自国に帰ってから独自の俳優訓練方法を研究しました。それが、アクターズ・スタジオの「ザ・メソッド」と呼ばれるやり方です。リラックスゼーションと、感情の記憶などを中心としたものです。

 しかし、アクターズ・スタジオの訓練方法では、俳優同士がそれぞれ孤立した存在になってしまうため、違った訓練方法が考え出されました。これは、俳優同士に感情の摩擦を起こさせて、その感情の交流を濃密なものにしていくというやり方です。「ネイバーフッド・プレイハウス・オブ・ザ・スクール」で行なわれています。俳優同士の感情の絡み合いが高い次元に達しますと、俳優が、その存在感に光輝いて見えます。これは近くで見ていると、本当に圧倒されるものがあります。

 この二つの俳優養成所には、世界中から俳優を志す人たちが集まってくるため、そこに入ることはかなり難しいようです。特に、アクターズ・スタジオは少人数しか採用しないため、非常に難しいようです。

 日本人でアクターズ・スタジオを卒業した人で、ゼン・ヒラノという人が演劇教室を開いていて、私はそこでこの訓練方法を体験しました。いまは、どこでどうしているのかよくわかりません。

 ネーバーフッドの方は、そこを卒業した仲井間嘉子という人が、下落合で演劇教室を開いていましたが、いまはどうしているのかよくわかりません。

 いずれにしても、こういったアメリカ的な訓練方法は、内面のリアリティを際限なく追求してゆくもので、こういう訓練方法から比べると、大劇団と言えども日本の劇団でやっている訓練方法というのは、ほとんど小学校の学芸会レベルに見えてしまいます。

 境界例の人は感情の変化が激しいので、俳優に向いているという人もいますが、たしかにそういう面はあると思います。





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