ホーム回復のための方法論



私の分析体験 2

あっと言う間に治った慢性疲労病
  Ver 1.0 1999/11/15


 私の自己分析での劇的な体験の二つ目がこれです。この体験をしたのは、まだ慢性疲労症候群なる病名が知られるようになる前のことでした。そして、この体験をする以前にも、原因不明の疲労感が何回か体験していました。だいたい最初はカゼのような症状で始まるのですが、これがなかなか治らないのです。しかも異常な疲労感があり、どうもカゼとは違うのではないかという感じでした。病院に行っても最初はカゼと診断されるのですが、その後はどうも変なのでいろいろな検査をするのですが、どこにも異常がありません。たとえば、肝臓が悪いのではないかとか、重症筋無力症ではないかとか、エイズではないかとか、考えられるようないろいろな病気を疑ってみても、どこにも異常が見つからないのです。医者としても他の原因が見つからない以上は、首をかしげながらも、風邪が長引いているのだろうとしか言いようがありませんでした。医者によっては脚気ではないかということで、ビタミン剤を処方してくれた人もいました。そんなわけでカゼ薬などを飲み続けたりするのですが、だいたい1ヵ月から3ヵ月くらいするといつの間にか症状が軽くなっていって、疲労感などが気にならなくなっていました。

 こういうことが何回かあったので、そのうちにこれは精神的なことが原因ではないかと思うようになりました。このような不可解な症状は他にもあったのです。たとえば朝から頭痛がひどくて、薬を飲んでも全然治らないので、病院に行こうと思い、起き上がって着がえをした途端に、嘘みたいに頭痛が消えてしまい、いったいこれは何なんだ、というようなこともありました。あるいは、歩くと乗り物酔いになるというような、わけの分からないような症状が出たこともありました。このようなことから、私の心にはさまざまな葛藤がありますので、そういった心の問題が身体の症状となって現われているんじゃないかと、なんとなく理解していたのです。

 その時も、軽い風邪のような症状から始まって、異常な疲労感が続いていましたが、どうせ精神的なことが原因なのだろうからと思い、病院には行きませんでした。しかし、精神的なことが原因なんだとは言っても、具体的にはどんな問題が原因なのかということまでは分からなかったのです。その瞬間が来るまでは。

 まあそういう状態だったので、特に治そうともせずに、症状が出ても症状のままにまかせていました。おそらくこれが神経症の人ですと、何とか克服しなければということで必死になってしまい、ますます泥沼にはまっていくのでしょうが、私は過去に一通りの検査は受けていましたので、あとは心の問題が解決するまでは、なるようにしかならないのだという、あきらめのようなものが出来ていました。

 そんなわけで日がたつにつれて症状がひどくなっていったのですが、「まあこんなもんだろう」と開き直っていました。症状の方は、疲労感が段々とひどくなっていって、日常的な動作さえもが辛くなり、布団の上で横になっていることが多くなりました。しかし、一人暮らしですので、冷蔵庫の中が空になると買い出しに出掛けなければなりません。そこで、五百メートルくらい先にあるコンビニまで歩いて行くのですが、これも段々と重労働になっていきました。そのうちに、コンビニに向かって歩いている途中で、あまりの疲労感から歩けなくなってしまい、歩道の脇にしゃがみ込むようになりました。本当に身体が鉛のように重くなり、足も疲れ果てて動かなくなってしまうのです。しかし、五分か十分くらいの間、ガードレールにつかまりながらしゃがみ込んでいますと、疲労感が少し和らいできますので、ふたたび立ち上がって歩き始めます。そんなわけで、コンビニにたどり着くまでには、一回から二回くらいはしゃがみ込んでいました。たまに人が通ると変な目で見ていきますが、自分でも情けないような気持ちでした。

 しかし、ついにその瞬間がやって来たのです。その時は、いつものように布団の上で横になって、いろいろなことを考えていました。親に対する憎しみに関することがほとんどだったのですが、さまざまな思いが浮かんでは消えてゆく中で、ふと弟のことが心に引っかかったのです。弟は、私のような落ちこぼれとは正反対のエリートです。子どものころからずっとそうでした。弟はなにかにつけて正統派であるのに対し、私はいつも反逆者であり、敗北者でもありました。私は弟に対する強い精神的なコンプレックスを持っていたのです。そして、そんなことは自分でも十分にわかっているはずだったのです、この瞬間までは。しかし、この時初めて弟に対する生々しい感情が心を覆いました。激しい嫉妬、羨望、さまざまな卑劣な感情、そして、その醜悪な感情の果てにある、弟への殺意というものを、この時になって初めて理解することが出来たのです。そして、自分の心に眠っていた、このような醜悪な感情に気付いたとき、一気に自己嫌悪の世界に落ち込んでしまいました。自分がいかに卑怯な人間であるかということ、自分の意地汚さ、暗い陰険な願望、そういう見たくもない自分の醜悪な姿を、いきなり鏡を突き付けられて見せつけられたような思いでした。そして、自己嫌悪という、口の中に砂を詰め込まれたような、実に嫌な感情に打ちのめされたのです。そして、そういう見たくもない卑しい陰険な自分というものを、その時になって初めて受け入れざるを得ないということに気付いたのです。自分というもののセルフイメージを完全に裏切ってしまうような、陰険で卑劣な自分を、これも自分なんだと認めるのは実に嫌なものですが、認めざるを得ないことを理解したのです。

 このような、一気に襲ってきた激しい自己嫌悪の苦痛が、やがて時間とともに和らいでいったとき、ふと気がつくと、なんとなく身体が軽くなっているのです。「あれ?」と思って布団の上で立ち上がってみますと、今まで私を苦しめていた鉛のような疲労感が嘘のように消えているではありませんか。まるで狐につままれたような感じでした。試しにその場で飛び上がってみますと、本当に体が軽くなっていて、まるで宙に舞い上がりそうでした。そこで嬉しくなって、ぴょんぴょんと何回も飛び跳ねてみたり、部屋の中をあちこち歩き回ってみました。何の問題もなく歩けるのです。たったさっきまであった、あの鉛のような疲労感はいったい何だったのだろうかと、不思議な思いがしました。しかし、まだ半信半疑だったので、試しに、今まで行くのが大変だったコンビニまで歩いてみようと思い、さっそく着替えて外に出ました。

 外に出ると、周りのものが今までとは違って見えるような、新鮮な違和感を感じました。ああ、あの時と同じだなと思いました。前回書いた劇的な体験の時と同じように、急に視界が開けたような感じで、今までとは違ったように見えてくるのです。しかし、今回は発狂しそうになることもありませんでしたし、不安感が数日間も尾を引くようなこともありませんでした。比較的短時間の自己嫌悪の苦痛だけでした。そして、そのあと、信じられないように疲労感が消えてしまったのです。精神的にも心のこぶがひとつ取れて軽くなったようでした。牢獄に何年間も閉じ込められていた人が、突然釈放されて街に出たような、新鮮な感覚でした。古い自分が死んで新しい自分が生まれたのです。そういう新生した自分にとまどいながら、コンビニに向かって行ったのですが、今までしゃがみ込んでいた場所で立ち止まると、しゃがみこんでいたときの自分と、今その場所を見下ろしている自分の、あまりの違いの大きさに不思議な思いがします。コンビニまでたどりつくと、意味も無く店内をぐるぐると歩き待ってみました。そして、さらにもっと遠くにある公園へと向かいました。

 それまで疲労感から引きこもり状態だったのですが、その後、久しぶりに知人に会ったとき、私を一目見るなり、少し驚いたようにして「顔が変わった」と言われました。顔が明るくなったそうです。これも心のコブがひとつ取れたことによるものかなと思います。逆に言えば、私の顔がそれまでは暗かったということになります。つまり、心の中に眠っているさまざまな葛藤が、顔つきにも反映されているということではないかと思います。

 このような心の仕組みというのは、頭では分かっていても、実際に自分で体験をしてみますと、実に不思議な思いに駆られます。この時は、心と身体の関係について、身をもって思い知らされました。結果としては、弟に対する埋もれていた感情が原因だったわけですが、なぜそれが疲労感という形で表現されるのかというところまでは、いまだに分析で来ていません。しかし、自分の心の中に埋もれている感情を知るという、ただそれだけのことで、これだけの変化が起きたのです。

 弟に対する埋もれた感情と言えば、「パニック障害」のところで紹介した女性のケースを思い出します。彼女も弟に対する埋もれていた感情に気づいたことによって、あっと言う間に広場恐怖などの障害が治ったわけです。私とは症状の違いはありますが、弟との関係が原因しているという点で共通しています。自己分析では親との葛藤に注意が向きがちですが、きょうだい間の葛藤も意外に大きな影響力を持っています。きょうだいというのは、親の愛情を奪い合う競争相手でもあるわけですが、ここに見捨てられ不安などが関係してきますと、競争は非常に屈折したものになり、嫉妬と羨望が渦巻いたりして、お互いに足を引っ張り合ったりします。そして、見捨てられ感に打ちのめされたりしますと、きょうだいの誰かが愛情を独り占めしていて、自分だけが見捨てられているというような、卑屈な敗北感を味わったりします。皆さんも、この文章を読んだ機会に、もう一度きょうだい関係について見直してみてはいかがでしょうか。見たくもない自分、知りたくもない卑劣な感情などが埋もれたままになっているかもしれません。

 私は前回書いたような母親への死の願望と、今回書いた弟への死の願望とで、二回劇的な体験をしたわけですが、母親、弟と続きますと、あと残っているのは父親ということになります。父親とのことは夢の分析の所に書くつもりですが、ずいぶん前からハッキリと夢の中に表現されていますし、夢を分析するまでもなく、自分でもそのことは十分に分かっているのですが、いまだにこの問題は解決していません。もしも、もう一度劇的な分析体験をするとしたら、間違いなく父親との関係ということになるのでしょうが、果たしてどんな形でその瞬間を迎えることになるのか分かりません。いずれにしても、非常に時間のかかる作業になると思います。

 実際の自己分析では、このような劇的な変化はめったになくて、小さな発見が何回も、何回も、積み重ねられていって、少しずつ自分が変わってゆくのです。

慢性疲労症候群(CFS Chronic Fatigue Syndrome )

 ここで慢性疲労症候群についても、少し説明しておきます。この病気は1984年にアメリカのネバダ州にあるタホ湖の湖畔にある町から始まりました。最初しつこいカゼのような症状から始まって、ひどい疲労感から日常生活が出来なくなってしまうというものです。次々と同じような患者が現れるため、ウィルスによる感染が疑われ、EB(エプスタイン・バー)ウィルスがその候補としてあげられましたが、これはどこにでもいるウィルスですので、これが原因であるとは特定されませんでした。

 その後、アメリカのあちこちで同じような集団発生が見られましたが、単発性の患者などもたくさんいて、そういう同じ症状を持つ患者たちが集まって、いくつかの団体が結成され、やがて政治的な力を持つようになりました。そうなると政府もじっとしているわけにもいかず、1988年に専門家を集めて会議を開き、病名と仮の診断基準を決めました。この時決まった病名が「慢性疲労症候群」です。診断基準としては、ひどい疲労感、微熱、喉の痛み、その他などが6ヵ月異常続くというものでした。ですから、私の症状は厳密に言うと期間が足りませんが、症状そのものは慢性疲労症候群そのものと言えるでしょう。

 日本でも、1990年の終わりごろにニューズウイークがこの病気を取り上げ、以前のエイズ騒動のこともあり、マスコミなどでは第二のエイズとか、原因不明の病気とかいうことで話題になりました。厚生省も1991年4月に研究班を作り、そこで日本独自の診断基準を作成しました。、

 これまでの研究の結果、原因として考えられるのは、ウィルス説、免疫異常説、うつ病説の三つが挙げられています。しかし、たくさんの研究者が必死になってウィルスを探しているのですが、いまだに原因となるウィルスは見つかっていません。治療方法もいろいろと研究されたのですが、その中で、決定的とは言えないまでも、一番効果のあった薬は、抗ウィルス剤でもなく、免疫機能を調整する薬でもなく、なんと抗うつ剤だったのです。うつ病では、だるさを感じたり疲れやすくなることが多いですし、免疫機能も低下して風邪をひきやすくなることなどが知られていますので、これでカゼや疲労感などの症状を説明できます。また、強いストレス下に置かれると、体温が上昇することも知られていますので、微熱が続くこともこれで説明できます。そして、ある研究者によると、患者からうつ病と神経症を除外すると、純粋な慢性疲労症候群の患者は10%以下になるという報告もなされています。しかし、うつ病説をとりますと、なぜ集団発生するのかという点が引っかかってきます。

 そこで、私の症状を振り返ってみますと、弟に対する隠された感情が原因だったわけですので、あの時抗うつ剤を投与すれば、おそらく、ある程度の効果はあったのではないかと思われます。しかし、抗うつ剤と言えども、私の無意識の世界を分析してくれるわけではありませんので、決定的な治療にはならなかったでしょう。これは抗うつ剤の治療限界でもあります。では、これが単発的に現われるのならともかく、なぜ集団発生するのかと言いますと、私はこれを集団ヒステリーのようなものではないかと解釈しています。たとえば、以前日本企業が円高圧力を回避するために一斉に海外に工場を移転した際に、現地採用をした社員たちの間に奇妙な現象が発生したケースがありました。現地で言われている悪魔か何かにとりつかれたようになって、仕事中に突然大声を出して暴れたりするのです。しかも、このような憑依現象のようなものが次々と現場の工員の間に伝染していって、工場の生産ラインに支障をきたすようになりました。そこで、原因を調べてみますと、ストレスが原因であることが分かりました。今まで、のどかな生活を送っていた農村の女性たちが、急に長時間の工場労働についたので、精神的なストレスが相当たまっていたものと思われます。そこで、そのストレスのはけ口として、無意識的に現地に伝わっている迷信が使われたのです。悪魔に取りつかれて大声で叫んだりすることで、精神的なストレスを解放していたのです。そこで、会社側は対策として、労働条件を緩和して、社員たちのストレスを和らげるようにしました。さらに、現地の呪術師を工場に呼んで、社員全員の前でおはらいのような儀式をやってもらいました。こうすることで迷信に対する精神的な区切りをつけたのです。それ以降、このようなトラブルはピタリとなくなりました。

 慢性疲労症候群の集団発生も、これと同じようなものではないかと思います。だいたい集団発生は病院の職員の間で発生することが多いのですが、病院では夜間の交替勤務などもありますので、ストレスの溜まりやすい環境にあると言えましょう。そして、医学的な知識も持っていますので、その分だけウィルスではないかという不安感が強くなるのではないかと思います。そこで最初に誰かがこのような症状になりますと、なにしろ原因不明の病気ですので、感染への不安がますます強くなります。単なる仕事の疲れであっても、もしかしたらこの病気によるものではないかという不安から自己暗示にかかってしまい、疲労がますますひどいものに感じられてしまいます。そして、原因不明の病気ですので、一人で不安を抱えているよりは患者として認定してもらった方がいいわけです。患者になることで、いろんな人が心配してくれますので、疾病利得が得られるのです(疾病利得というのは、病気になることで精神的な利益を得ることを言います。ですから精神的なことが原因であると言われると反発したりします)。職員の間から何人かの患者が出たりしますと、さらに不安が募り、自己暗示から我も我もと言う状態になってしまい、患者が大量発生することになります。このようにして、感染と似たような現象が起こると思われます。そして、なぜ病院のスタッフだけが「感染」して、患者にはほとんど「感染」しないのかという理由も、このようなメカニズムによるものと思われます。

 もし、このような症状が出たら、疲労や微熱というのはさまざまな病気で見られる症状ですので、取り敢えず一通りの検査を受けておいた方がいいと思います。それでも原因が分からないときは、「慢性疲労症候群」ということになるのでしょう。医師の中にはウィルス説や免疫異常説を支持している研究者もいるようですし、うつ病説をとる精神科医でも、精神分析を知らない人は、抗うつ剤を投与するでしょう。患者の方も、原因不明の病気と言われ、どうしていいか分からずに、悩み続けることになります。中には一生を棒に振る人もいるようです。しかし、ヒステリーという視点からとらえれば、このような重篤な症状も別に珍しいことではありません。ヒステリーでは手足が麻痺したり、突然意識を失って倒れたり、耳が聞こえなくなる、声が出なくなる、目がまったく見えなくなるというような派手な症状があるのですが、医学的な検査してみると不可解なことが多いのです。そこで身体表現性障害などといった、ヒステリー系の診断名が下されたりします。つまり、このような派手な症状は、心の葛藤の結果として現われているのです。ですから、ヒステリーの治療には心の葛藤を解いてやらなければなりません。これはまさに精神分析の得意とするところであります。フロイトが精神分析の理論を構築するのに、このようなヒステリー患者の治療が大いに貢献しています。

 精神科医ではない人たちは、やはりどうしてもウィルスや免疫の異常にこだわるようです。厚生省の研究班もかなりの予算をつけて研究しているようですが、果たしてどうなることやら。

 もし、慢性疲労症候群をヒステリー系統のものとしてとらえるならば、鑑別不能型身体表現性障害という診断になるでしょう。ということで、備考欄に慢性疲労症候群の厚生省による診断基準と、DSMの鑑別不能型身体表現性障害の診断基準を掲載しておきました。


【関連ページ】
 パニック障害、過換気性症候群
   ( 境界例の周辺症状 ) あっと言う間に広場恐怖が治った女性のケース

【参考文献】
「慢性疲労症候群の正しい知識」
   中野弘一 全日本病院出版会 1994.1.10 \1000
「名医が書いた病気の本 慢性疲労症候群」
   保坂隆 野村総一郎 新星出版 1993.8.1 \1300
「慢性疲労症候群」
   ニーヤ・オストローム 診断と治療社 平成4.9.15 \1000-
「カプラン臨床精神医学テキスト」
   ハロルド・I・カプラン他 医学書院 1996.12.10 \15,000-
工場での憑依現象は何の本に書いてあったのか思い出せませんでした。たしかブルーバックスか現代新書だったように思うのですが……。


厚生省による慢性疲労症候群(CFS)の診断基準
A. 大基準
1. 生活が著しく損なわれるような強い疲労を主症状とし、少なくとも6ヶ月以上の期間持続あるいは再発を繰り返す(50%以上の期間認められること)
  この強い疲労とは、疲労が短期間の休養で回復せず、月に数日は疲労のため、休まなければならなかったり、家事ができず、しばしば臥床せねばならない程度のものである。[この疲労の程度については別表1「P.S (performonce status) による疲労・倦怠の程度」の段階3以上のものとする]

2. 病歴、身体的所見、検査所見で別表2にあげられている疾患を除外する。但し、精神疾患については別表2以外の心身症、神経症、反応性うつ病などはCFS発症に先行して発症した症例を除外するが、同時または後に発現した例は除外しない。特にうつ病に関しては、両極性うつ病は直ちに除外するが、単極性のものは精神病性が明らかになった時点で除外することとし、それまでの診断不確定の間は反応性うつ病と同じ扱いとする。

B.小基準
I.症状基準
1.以下の症状が6ヶ月以上にわたり持続または繰り返し生ずること。
(1) 微熱(腋窩温37.2〜38.3度)あるいは悪寒
(2) 咽頭痛
(3) 頸部あるいは腋窩リンパ節の腫脹
(4) 原因不明の筋力低下
(5) 筋肉痛あるいは不快感
(6) 軽い労作後に24時間以上続く全身倦怠感
(7) 頭痛
(8) 腫脹や発赤を伴わない移動性関節痛
(9) 精神神経症状(いずれか1つ)
   羞明、一過性暗点、健忘、興奮、昏迷、思考力低下、集中力低下、うつ状態
(10) 睡眠異常(過眠・不眠)
(11) 発症時 、主たる症状が数時間から数日の間に発現

II.身体所見基準 (少なくとも1月以上の間隔をおいて2回以上)
(1) 微熱
(2) 非滲出性咽頭炎
(3) リンパ節の腫大(頚部、腋窩リンパ節)

※A:大基準2項目、B:小基準、1.症状基準:11項目、II.身体所見基準3項目より構成され
I )@:A2項目+BI6項目以上+BII2項目以上。あるいは、
  A:A2項目以上+BI8項目以上のいずれかを満たすと「CFS」と診断する。
2)A2項目を備えるが、B項で診断条件を満たさない例は「CFS疑診例」とする
上記基準で診断されたCFS(疑診例は除く)のうち、感染症が確診された後、それに続発して症状が発現した例は「感染後CFS」と呼ぶ。

別表1 P.S.(Performance Status)による疲労・倦怠の程度
0:倦怠感がなく平常の社会生活ができ、制限を受けることなく行動できる。
1:通常の社会生活ができ、労働も可能であるが、疲労感を感ずるときがしばしばある。 
2:通常の社会生活はでき、労働も可能であるが、全身倦怠感のため、しばしば休息が必要である。
3:全身倦怠感のため、月に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
4:全身倦怠感のため、週に数日は社会生活や労働ができず、自宅にて休息が必要である。
5:通常の社会生活や労働は困難である。軽作業は可能であるが、週のうち数日は自宅にて休息が必要である。
6:調子のよい日には軽作業は可能であるが、週のうち50%以上は自宅にて休息している。 
7:身の回りのことはでき、介助も不要であるが、通常の社会生活や軽労働は不可能である。
8:身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助がいり、日中の50%以上は就床している。
9:身の回りのこともできず、常に介助がいり、終日就床を必要としている。

別表2 除外疾患
・悪性腫瘍
・自己免疫疾患
・限局性感染症(潜在膿瘍など)
・急性・慢性細菌性感染症(心内膜炎、ライム病、結核など)
・真菌性感染症(ヒトプラズマ症、分芽菌症、コクシジオイデス症など)
・寄生虫感染症(トキソプラズマ病、アメーバー症、ランブル鞭毛虫症、蠕虫症など)
・HIV感染症
・精神神経疾患(分裂病、躁うつ病、 脳損傷、変性などの器質的脳病変による精神疾患)
・慢性炎症性疾患(サイコルドーシス、Wengener肉芽腫症、慢性肝炎など)
・神経筋疾患(多発性硬化症、重症筋無力症など)
・内分泌疾患(甲状腺機能低下症、Addison病、Cushing症候群など)
・薬物依存(アルコール、モルヒネ、コカインなど)
・中毒(溶剤・殺虫剤・重金属など)
・その他の慢性疾患(呼吸器・心臓・消化器・肝臓・腎臓・血液疾患)


鑑別不能型身体表現性障害の診断基準 DSM-IV
A.1つまたはそれ以上の身体的愁訴(例:倦怠感、食欲減退、胃腸系または泌尿器系の愁訴)
B.(1)または(2)
(1)適切な検索を行なっても、その症状は、既知の一般身体疾患または物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的作用として十分に説明できない。
(2)関連する一般身体疾患がある場合、身体的愁訴または結果として生じている社会的、職業的障害が、既往歴、身体診察、または臨床検査所見から予測されるものをはるかに越えている。
C.症状が、臨床的に著しい苦痛または、社会的、職業的または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。
D.障害の持続期間は、少なくとも6ヵ月である。
E.その障害は、他の精神疾患(例:他の身体表現性障害、性障害、気分障害、不安障害、睡眠障害、または精神病性障害)ではうまく説明されない。
F.症状は、(虚偽性障害または詐病のように)意図的に作り出されたりねつ造されたりしたものではない。




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