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境界例・人格障害
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境界例/人格障害(専門書)
本の題名をクリックすると、オンライン書店 Amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。

 NEW 2/27
BPD境界性人格障害のアセスメントと治療
著  者:メラニー・ディーン
出版社:金子書房
発行日:2005年11月25日 価格:¥2,600- ISBN : 476083236X
 
 この本は、下の方で紹介してある「 Borderline Personality Disorder The Latest Assessment and Treatment Strategies 」の翻訳本です。境界性人格障害に関する最新の治療戦略を、分かりやすく簡潔にまとめてあります。
 まず診断における特徴や要点、そして自殺既遂率などの各種データが簡潔に書かれています。
 それから、各種の治療法を取りあげ、それぞれの考え方や治療方法について、簡潔に分かりやすく説明されています。精神力動的療法、精神分析的療法、対人関係療法、認知療法、弁証法的行動療法、認知分析療法、薬物療法などが取りあげられています。
 この本の特徴は、なんと言ってもセラピストと患者との架空の会話を通して、各種療法の違いを解説している点です。同じ会話からスタートして、それぞれが違った展開になって行きます。
 薄い本ですが、専門家のみなさんにとっては、境界性人格障害をとりまく状況を簡潔に俯瞰するのにいいのではないかと思います。
 ただ残念なのは、翻訳者も指摘しているのですが、家族療法について書かれていないことです。


境界性人格障害―治療技法の洗練 I

★注 Amazon.co.jpでは扱っていません。出版社からクロネコヤマトのブックサービスを経由しての取寄になります
雑誌「精神科治療学」 星和書店 2004年 6月号
 
 九十年代の前半くらいまでは、境界例の論文がたくさん発表されていましたが、最近では公表される論文の数が、めっきりと少なくなっています。そこで、現在行われている治療技法の「洗練」という点に焦点を合わせて、この特集が組まれたようです。
 特集の第一部であるこの号には、六本の論文が掲載されています。この中でも、特に画期的と思われる論文は、衣笠隆幸氏による、境界性人格障害と、高機能型発達障害の関係について書かれた論文です。子供のころには問題が表面化せずに、大人になってからさまざまな精神症状を見せる患者たちについて、子供のころにさかのぼって調べていくと、発達障害の存在が浮かび上がってくるのです。このように背景に発達障害が存在するケースの内、14%が境界性人格障害と診断されていました。事例も掲載されていますが、このようなケースでは従来型の治療技法に変更を迫るものです。背景に発達障害の存在が疑われるときの診断方法についても書かれていますが、さらなる研究の展開が望まれる分野です。
 認知療法についても原田誠一氏によって書かれていますが、「境界性人格障害での有効性のエビデンスはまだ限局されたものであり、きわめて濃密な治療的介入を行った一部の臨床研究などでのみ治療効果が立証されているのが現状である」という言葉は興味深いです。原田氏の認知療法による治療は、読売新聞の境界線人格障害の特集で取り上げられたのですが、新聞掲載後の顛末なども書かれています。
 ほかに興味深かった論文は、小川豊昭氏による大学の保健管理センターでの治療についてです。学生の境界例の症状には、学部によってそれぞれ違った特徴があるというのです。ほかにも構造化が難しい環境で治療を行うことの問題点や、同僚の教員を治療するときの問題点なども書かれています。


境界性人格障害―治療技法の洗練 II

★注 Amazon.co.jpでは扱っていません。出版社からクロネコヤマトのブックサービスを経由しての取寄になります
雑誌「精神科治療学」 星和書店 2004年 7月号
 
 この号は特集の第二部で、八本の論文が掲載されています。
 興味深かったのをいくつか挙げてみます。
 大塚公一郎氏らによる論文は、入院治療を行うときに、患者の同意による構造化がいかに重要であるかという事が書かれています。そして、患者の同意のない緊急入院の場合の問題点や、患者が約束を破ったときにどう対応したらいいのかという事もか書かれていますので、入院治療を行う際に、いろいろと参考になるのではないでしょうか。
 明橋大二氏は、治療過程を七段階に分けて、それぞれの段階での行動化をどのようにとらえたらいいのかということや、行動化に対して具体的にどのように対応したらいいのかということを書いています。また、患者が限界設定を破ったときの対応についても書いています。
 市橋秀夫氏は、行動化や逆転移を起こさないようにと自分で工夫した、さまざまな技法を紹介しています。具体的に、こういうときにはこういう言い方で対応した方がいい、という事が書かれていますので、実際の治療場面で参考になると思います。
 公募論文という形で、弁証法的認知行動療法(DBT)の論文がひとつだけ掲載されています。標準型のDBTを、思春期の患者にそのまま適応するにはいろいろな問題があることから、治療技法の修正がいくつか試みられているようですが、ここではひとつの症例を挙げて、技法の修正と応用について論じています。
 もうひとつ公募論文ということで、入院初期の対応に焦点を当てて書かれた論文がありますが、具体的な問題を取り上げていますので参考になるかと思います。


青年期境界例

著  者:成田善弘
出版社:金剛出版
発行日:1989年02月日 価格:¥3,500-  ISBN : 477240306X
 
 精神療法を行っているセラピストの世界には、同業者から人気を得ているセラピストが何人かいますが、著者の成田善弘もその一人です。成田は境界例の治療にも早くから取り組んでいて、マスターソンなどの治療理論の紹介にもつとめてきました。ですので、境界例の治療に関しては、ベテラン中のベテランであると言っても過言ではないでしょう。
 成田は理論家というよりも、実践を重視する臨床家であり、その豊富な経験から語られる言葉には、経験者としての重みがあります。そして、成田が同業者から人気を得ている理由のひとつとして、自分の弱さや失敗も謙虚に振り返って、なぜ失敗したのかと考察する、その素直さにあるのではないかと思うのです。いわば「人間の顔をしたセラピスト」であるとも言えるでしょう。
 この本は、境界例の治療に関して系統的に書かれたものではなくて、覚え書きのような形で、様々なことが書かれています。マスターソンから直接スーパービジョンを受けたときのこと、境界例患者の行動化に接したときに揺れ動く自分の心理、転移や逆転移の発生、錯綜する投影性同一視の問題などについて、実に深い洞察を示しています。読んでいて、思わず笑ってしまうようなユーモラスなところもありますし、いろいろな場面での心構えや、治療に行き詰まったときの対処法といったようなことなども書かれています。
 セラピストの初心者は、理論的なことを学んだ後でこの本を読めば、臨床で理論を生かすための参考になると思います。境界例の患者を手がけたことのあるセラピストにとっても、実践的な治療のコツがたくさん書かれていますので、自分の臨床を振り返ってみて治療のあり方を反省したり、自分自身の心の問題に気付いたりすることがあるのではないかと思います。


境界例の治療ポイント

著  者:平井孝男
出版社:創元社
発行日: 2002年09月20日価格:¥1,800-
ISBN : 4422112805
 
 この本は、セラピストと患者の両方を読者対象として書かれた本のようです。著者は、たくさんの境界例患者を扱ってきた経験を生かして、境界例の治療技法を対話形式でわかりやすく解説しています。
 まず最初に、患者や家族からよく聞かれる質問への答え方について、具体的な言葉の選び方などを、例を挙げながらわかりやすく説明しています。この部分は、セラピストだけではなくて、患者や患者の家族にとっても参考になるでしょう。その次に、境界例の専門的な解説を、具体的な事例をあげながらわかりやすく解説しています。特にセラピストにとって参考になると思われるのは、非常に具体的で実戦的な対処方法が書かれているという点にあります。患者が読んでも、回復の参考になるようなことが書かれています。
 しかし、著者は宗教系というか、仏教関係の人のようで、内面への洞察がどうしても仏教的な方向へ流れてしまいがちです。それにこの本では、逆転移の問題が書かれていません。逆転移の問題は、セラピストにとって、治療を左右するものであり、これこそがこの本のテーマでもある「治療のポイント」であると思うのですが、考え方の違いと言われればそれまでですが、この問題は取り上げられていません。
 著者は場数を踏んでいますので、ベテランならではの細かい配慮や、なるほどと思わせるようなテクニックも披露していたりするのですが、その一方で患者の問題を、未熟、幼稚、無知、といった図式で片付けたり、患者の親を基本的には善人というキャラクターで捉える傾向があったりしますので、虐待にはどんな対応をしているのだろうかと考えると心配になりました。
 末尾に、読んでいてこちらが恥ずかしくなるくらいに、やたらと著者を賞賛しまくっている患者の感想文が掲載されているのですが、おそらく自分の患者の中からこういう心理状態にある人を選んで、この本の感想文を書かせたのでしょう。どういう編集上の意図があるのだろうかと首を傾げてしまいました。


Borderline Personality Disorder

  The Latest Assessment and
     Treatment Strategies  2nd edition

著  者:Melanie A., Ph.D. Dean
出版社:Midpoint Trade Books Inc
発行日:2001年07月01日 価格:$14.95
ISBN : 1887537171
 
 この本は、Compact Clinicals シリーズのひとつとして書かれた本です。いそがしくて時間のないセラピストのために、治療に関する解説を最新情報も取り入れながら内容をコンパクトにまとめて編集したものです。文章も、あまり学術的にならないように、読みやすく書かれていて、内容的にもよくまとまっています。
 まず最初に境界性人格障害の説明と、診断の参考になる各種の心理テストの解説や、よく似たほかの人格障害との違いなどが書かれています。そして、治療の説明に移って、各種の療法が分かりやすく解説されているのですが、非常に面白いと思ったのは、それぞれの療法の違いをわかりやすくするために、治療の具体例として、あるリストカットした患者の訴えを共通の出発点にして、それぞれの治療の進み方を解説している点です。
Client : Last time we met, I could tell you didn't really care about me, you were just seeing me for the money. I was so mad I went home and cut on my wrists, I couldn't help myself.
 というふうにセラピストを非難する患者に対して、この後に続くセラピストとの会話が、それぞれの療法ごとに違った形で展開していくのです。解説している療法としては、まず最初にサイコ・ダイナミック療法(力動的精神療法)を取り上げて、そのなかでも伝統的なアプローチ、支持的なアプローチ、表出的なアプローチについて解説しています。それから、古典的な精神分析の解説、対人関係療法、認知療法、弁証法的行動療法、再発防止療法、集団療法の解説をしています。最後に薬物療法の解説をして、症状ごとに用いられる薬の名前とその副作用の説明をしています。


青年期境界例の治療

著  者:ジェームス・F・マスターソン
出版社:金剛出版
発行日:1979年 7月15日 価格:¥7,800-
ISBN : 4772400974
 
 境界例の治療技法に関して、初めて日本で出版された本です。境界例を扱うには、まずこの本に目を通しておいた方がいいでしょう。
 マスターソンは、マーラーの発達理論にある分離−個体化の失敗が境界例の根底にあるとしました。そして、そこから発生する「見捨てられ不安」に注目し、治療の目標を分離−個体化の達成に置きました。治療プロセスの説明として、入院治療における「試し」の問題、徹底操作、家族との合同面接、精神的な分離、そして外来治療に移行したときの問題点、見捨てられ不安に対して用いられる各種の防衛機制などについて書いています。それぞれ具体的に患者の治療経過を描きながら分かりやすく解説しています。
 マスターソンは非常に明快で分かりやすく、セラピストにとっても、具体的に臨床場面で役立つことが多いようです。しかし、逆に割り切りすぎているような面もあり、こういう点で批判されることもあります。
 (現在、入手不能状態です)


境界例とその周辺

著  者:悳智彦(いさお・ともひこ)・衣笠隆幸・伊藤洸
出版社:金剛出版
発行日:1996年 1月30日 価格:¥4,000-
ISBN : 4772405011
 
 セラピストのために、境界例治療の入門書として編集された本です。周辺疾患をいくつか取りあげ、最後にディケアと作業グループなどについても触れています。
 境界例の解説に関しては、まず最初にマーラーの発達論を取りあげ、分離−個体化のプロセスについて説明し、次にクライン派とコフートのそれぞれの理論と技法について、具体的な症例をあげて解説しています。境界例とだぶってくる周辺疾患である精神分裂病、自己愛人格障害、神経症などについて、それぞれ具体的な症例をあげて治療経過を詳しく説明し、治療上の問題点などについて検討しています。作業療法やグループ療法などについても、その理論と技法について、具体的なケースをあげながら解説しています。


境界例・重症例の心理臨床

  心理臨床の実際 第5巻
著  者:河合隼雄・山中康裕・小川捷之 執筆者全18名
出版社:金子書房
発行日:1998年12月 1日 価格:¥4,000-
ISBN : 4760892753
 
 ユング派の人たちによる、境界例とその周辺の重症神経症などの治療に関する本です。私はユングというと、どうしても「オカルト的」という印象を持ってしまってちょっと抵抗があるのですが、この本では、ユング派、折衷派、精神分析派のそれぞれの執筆者が、それぞの立場で境界例の治療に対する考え方を書いています。治療事例として取り上げられている周辺症状を羅列しますと、分裂病、離人症、演技性人格障害、自己愛人格障害、解離性障害、重症視線恐怖、重症対人恐怖、醜貌恐怖、重症強迫などです。終わりの方の第二部では、ユングの解説があり、錬金術だとか、シャーマニズムと癒しだとか、いろいろなことが書かれています。ユングでなきゃダメという人には、この本をお勧めします。


境界例の精神療法

著  者:福島章 編
出版社:金剛出版
発行日: 価格:¥3,000-
ISBN : 1992年10月15日
 
 ホームページの表紙に書いた、「何で生きなきゃならないのか教えろ」という少女の叫びは、この本の中から引用しました。
 本の内容は、三部構成になっています。第一部では境界例の病理について、西園昌久、河合隼雄などが書いています。第二部では治療の技法を取りあげていて、大野裕がカーンバーグの技法を、成田善弘がマスターソンの技法について書いています。森田療法に関して書かれたものもあります。第三部では症例研究として四つのケースについて、その治療の過程が詳しく書かれています。セラピストたちが、自分の失敗についても正直に書いている点が評価できます。


境界例の臨床

著  者:牛島定信
出版社:金剛出版
発行日:1991年 7月 1日 価格:¥5,000- ISBN : 4772403639
 
 この本では、まず最初に境界例概念の変遷と現状、そして診断について解説しています。それから、二つの事例について検討を行った後に精神力動的な面から考察を行っています。そして、作家の三島由紀夫について、人格の発達という視点から分析を行っています。後半の方で、境界例の治療での行われる個人精神療法について、マスターソン、ウィニコット、カーンバーグなどの理論をもとに詳しく解説しています。また、筆者自身の治療技法についても、具体的な症例をあげながら書いています。そして、逆転移の問題や入院治療についても書いています。
 治療技法について、事例をあげがら、理論や技法について具体的に解説しているますので、治療を進めるにあたって、参考になることが多いのではないかと思います。


「境界例」論文集

  「精神科治療学」選定論文集
出版社:星和書店
発行日:1998年 4月 1日 価格:¥3,800- ISBN : 479110370X
 
 この本は、雑誌「精神科治療学」に掲載された境界例に関する論文をまとめて収録したものです。成田善弘が全体的な解説を行い、いろいろな人が治療技法について書いています。市橋秀夫の境界例シフトに関する論文、岡野憲一郎の境界例を外傷説からとらえた論文、牛島定信の境界例患者の予後と加齢に関する論文など、全部で十六本の論文が掲載されています。


境界例

  家族療法ケース研究〈3〉
著  者:石川元
出版社:金剛出版
発行日:1989年 8月 1日 価格:¥3,500- ISBN : 4772403183
 
 この本は家族療法の視点から書かれた本です。まず石川元が境界例の家族療法について症例をあげながら解説を行ったあと、いろいろな人が全部で九件の事例を書いています。最後に、馬場禮子がエッセイとして境界例にとって家族療法とはなんなのかということを書いています。
 境界例というのは、家族を巻き込んだ病理なのですが、家族療法ではそのアプローチによって、家族内の力動にアクセスしていきますので、ある意味では興味深いものがあります。心の問題を抱えた母親を扱った事例が興味深かったです。


境界パーソナリティ障害(BPD)

  精神医学レビュー No.20
著  者:小此木啓吾・大野裕 執筆全23名
出版社:ライフ・サイエンス
発行日:1996年 9月20日 価格:¥2,800-
ISBN : 4898011292
 
 150ページしかないのに、二十数人もの執筆者が、寄ってたかってさまざまなことを書いています。成田氏が精神療法について書いているほか、認知療法、薬物療法、ラカン派、ユング派、などいろいろあります。近接する症状として、心身症、摂食障害、etc. などが取り上げられています。最後の方で、小此木啓吾、牛島定信、福島章、笠原俊彦、といった大御所たちによる座談会が掲載されていて、境界例治療の裏話的な話題も出ています。
 いろんなことが書かれていますので、境界例の治療状況を理解するにはいいかもしれません。


こころの科学

  93号 (雑誌)特別企画 人格障害  福島章 編
出版社:日本評論社
発行日:2000年 9月 1日 価格:¥1,143-
ISBN :
 
 人格障害に関する12本の論文が掲載されています。町沢静夫は、相変わらずカーンバーグを批判しています。福島章もまた脳の問題を取り上げています。興味深かったのは、遠藤裕乃が書いた、逆転移の克服方法に関する工夫です。セラピストとしての体験に基づいた「知恵」は説得力があります。他には、奥村雄介の書いた、医療少年院における行為障害の治療に関する論文も、興味深いものがありました。高橋紳吾の書いた、連続殺人犯たちに関する考察も良かったです。


DSM‐IV‐TR

  精神疾患の診断・統計マニュアル
著  者:米国精神医学会 編集
出版社:医学書院
発行日:2002年02月01日 価格:¥19,000-  ISBN : 4260118633
 
 アメリカ精神医学会による診断マニュアルの最新版を全訳した本です。WHOが作成した診断基準よりも、こちらの方が実際の診断で世界的に使われています。
 セラピストの中には、このような診断基準を軽視する人もいますが、人によって病名や病名の定義が違っていたのでは話になりません。患者の治療を行うには、まず最初に、共通の診断基準に基づいた的確な診断が必要となります。
 この診断基準は、患者の状態を立体的に理解するために、多軸評定をもちいています。第一軸は臨床疾患。第二軸は人格障害と精神遅滞。第三軸は身体疾患。第四軸は社会的、環境的問題。第五軸は、その人の機能の全体的評定。という五つの面から患者をとらえるようになっていて、それを記録するときの書式もサンプルが示されています。
 それぞれの診断単位ごとの解説としては、まず【診断的特徴】で、具体的な症状を取り上げて全体像をわかりやすく解説しています。そして、その病名の中で、さらにいくつかの病型があることや、記録の手順、【関連する特徴および障害】などが記載されています。そして、【有病率】、その病気の【経過】【家族発現様式】【鑑別診断】が書かれています。鑑別診断では、ほかの紛らわしい類似の症状と区別するための要点が具体的に分かりやすく書かれています。そして、最後に【診断基準】が書かれています。
 この本の末尾には、診断基準には採用されなかったものの、今後の研究用に提案された診断基準なども掲載されています。
 ちょっと高価で分厚い本ですが、精神科医や臨床心理士にとっては必要な本ですし、ほかの資格のカウンセラーにとっても、こういった精神医学の知識を持たないままにカウンセリングすることの危険性を考えますと、できるなら手元に置いておいた方がいいのではないかと思います。
 なお、各疾患の診断基準だけを抜粋した本で、「 DSM‐IV‐TR―精神疾患の分類と診断の手引 」 \3,800-という本もあります。


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【 境界例と自己愛の障害からの回復 】