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リストカット(手首自傷症候群)
本の題名をクリックすると、オンライン書店 Amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。
現代のエスプリ443
  自傷 リストカットを中心に
編  集:川谷大治
出版社:至文堂
発行日:2004年06月01日 価格:1,381¥ ISBN : 4784354433
 
【注意 この本は専門書です】
 この本では、自傷についてたくさんの人が、いろいろなことを書いていますので、リストカットを中心とした自傷治療の最新の状況が分かるのではないかと思います。
 中でも興味深かったのは、巻頭にある、牛島氏と川谷氏の対談です。リストカットの治療が時代とともにどのように変わってきたのかが語られ、治療はどうあるべきかということも、具体的な事例や苦労話とともに語られています。対談ですので、わかりやすい言葉で語られているので、読みやすくてよかったです。
 自傷との関連で、虐待、境界例、摂食障害、解離性障害などについてもそれぞれの論文があって、興味深かったです。
 治療技法としては、精神分析的心理療法や、大野裕氏による弁証法的行動療法の解説なども興味深かったです。

リストカット
    手首を切る少女たち  
著  者:小田晋(おだ・すすむ)
出版社:二見書房
発行日:2000年10月25日  価格:¥1,300
 
 私がホームページにリストカットの解説を書いたときには参考になる本がまったく無かったので、わざわざ国会図書館まで行って論文をコピーして来たのですが、今回、日本で初めてリストカットに関する本が出版されたことを歓迎します。しかし、リストカットというテーマと、小田晋という著者の組み合わせに関しましては、少々「?」であります。
 内容について書きますと、はじめの方で、編集部の人がリストカット経験者6人に取材して書いた記事が掲載されています。そして、取材した時に撮影した、傷痕のたくさん付いた腕の写真も掲載されています。体験者の中にはホームページを開設している人もいます。
 この取材記事の後で、小田晋が解説を書いています。リストカットの歴史、境界性人格障害や自己愛性人格障害の説明、リストカットの伝染性、などについて書いています。原因については、乳幼児期の母子関係の問題を指摘して、育児論を展開したり、文化論を展開したりしています。最後の方で、治療について少し書いているのですが、著者自身も「かならずしも一般的な治療方法ではありませんが」と断りながらも、解離型のリストカットについて、自白剤を使った治療方法などを紹介しています。
 著者は、リストカットの原因のひとつとして、「死の本能」を取り上げて説明しているのですが、これは不適切な説明であると言えるでしょう。死の本能という概念は、たしかにフロイトが提唱したものなのですが、フロイトの理論のすべてが、そっくりそのまま現代に至るまで生き延びているというわけではありません。特に、死の本能に関しましては、現在大多数の人がその存在について否定しています。


リストカットシンドローム
 
著  者:ロブ@大月
出版社:ワニブックス
発行日:2000年11月  価格:¥1,400
 

 八人のリストカット体験を書いた本です。それぞれの置かれた家庭環境や、リストカットに至る過程などがていねいに書かれていますので、共感できる部分がたくさんあるでしょう。
 リストカットと言えば、それだけで、ほぼ境界例と考えていいと思うのですが、この本に登場する人たちの抱えているさまざまな問題も境界例そのものなのです。しかし、残念なことに、この本には「境界例」とか「境界性人格障害」という言葉はひとつも出てきません。ですので、見捨てられ不安や、分離−個体化の失敗といった視点からのアプローチはありません。しかし、著者は体験的に、リストカットの背後には、親子の問題があるという点については指摘しています。
 著者は、マスコミの取材に対して、自傷に詳しい精神科医はいないと答えているようなのですが、実際にはいます。また、著者はカウンセリングはコスト的な負担が大きいと書いているのですが、もし境界性人格障害の診断が降りれば、三十二条の適応の対象となって、負担がはるかに軽くなります。思春期病棟や、境界例を扱っている精神科では、リストカットは良くあることですので、扱いには慣れていると思います。そして、境界例の精神療法をやっているところでは、それなりに適切な対応をするのではないかと思います。(精神科全体から言えば数は少ないですが……)
 リストカットという表面的な症状だけにとらわれていると、背後にある境界例という本質的な問題が見えなくなってしまうのかもしれませんが、いずれにせよ、この本には豊富な体験談が掲載されていますので、リストカットをしている人にとっては、この本の中に自分自身の姿を見ることでしょう。
(注 : なかには、この本を読むことで、症状が悪化してしまう人がいるかもしれません)


生きちゃってるし、死なないし
    リストカット&オーバードーズ依存症  
著  者:今一生
出版社:晶文社
発行日:2001年08月01日 価格:\1,600-
ISBN : 4794964994  
 この本は巻き込み型のようです。
 著者は話の分かる関係を求めて、イベントを開催したりして、様々な行動を起こしているのですが、それに乗ってこないマスコミに対しては怒りを抱いているようです。また、自傷行為を否定するような人たちに対しても怒っているようで、著者は自傷行為を肯定的にとらえようとしています。
 この本の後半では、回復のためのアドバイスを書いているのですが、ちょっと軽い躁状態なのかなという印象を受けましたし、内容的にも少し空回りしているように思いました。
 著者はリストカットなどの自傷行為を、依存症という観点からしか見ていませんので、境界例という視点はありません。ですので、背後にある見捨てられ不安や、分離−固体化の問題、人間関係の操作、などといった問題には触れられていません。また著者は医療の受け方についても書いているのですが、少し挑発的な内容ですので、、医師との間で不要なトラブルを招くのではないかと気になりました。しかし、著者のような「行動化」に対しては、心理的な接点を見いだす人も多いのではないかと思います。


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【 境界例と自己愛の障害からの回復 】