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性的虐待をする女性
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この分野は、日本ではまだほとんど手付かずの状態ですので、 専門家の皆様の取り組みをお願いいたします。
本の題名をクリックすると、オンライン書店 Amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。
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Female Sexual Abuse of Children
Edited by Michele Elliot
1994 by The Guilford Press $24.00
ISBN : 089862004X
女性による性的虐待は、男性の加害者よりもはるかにタブー視されています。なぜならば、か弱い女性がそんなことをするはずがないという思いこみや、母親が子どもに性的ないたずらをするはずがないという母性神話に基づいた偏見などにいろどられているからなのです。ですので、女性による性的虐待はきわめて希なケースとされてきたのです。しかし、最近の研究によって、どうやら男性の加害者ほどではないにしても、相当の数の女性の加害者がいるのではないかと推定されるようになってきたのです。
この本では、母性神話などがもたらす強烈な偏見や、その偏見が被害者に与える心理的影響の問題などについて、具体的な事例や、調査に基づいた数字などをあげながら解説しています。そして、治療のあり方や注意点などについても解説しています。
この本の後半には、体験談がたくさん掲載されています。幼いころに母親から性的ないたずらをされたり、性的な虐待を受けてきた女性たちのケース。同じように、幼いころに母親などから性的ないたずらや虐待を受けてきた男性たちのケースが紹介されています。最後に、被害者のためのセルフ・ヘルプのアドバイスなどが書かれています。
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Abused Boys
The Neglected Victims of Sexual Abuse
by Mic Hunter
1999 Ballantine Books $11.00 USA
ISBN : 0449906299
この本は少年に対する性的虐待の問題を取り上げているのですが、特に女性の加害者の問題について詳しく説明しています。まず、性的虐待の定義から書き始めているのですが、どのような行為が虐待になるのかということについて、具体的で分かりやすい例をあげながら丁寧に解説しています。そして、なぜ男性が「被害者」になるのかという問題を取り上げています。少年の場合には、大人の女性から性的なことをされたら、それは良いことであり、性的な手ほどきを受けたのだから感謝すべきである、というような誤った受け止め方が蔓延しているのです。そして、被害者自身もこのような誤った受け止め方をしてしまうことが多いのですが、このような考え方は、まったくの間違いなんだということを、具体例をあげながら、なぜそれが虐待になるのかということについて、分かりやすく解説しています。そして、子どものころに性的な虐待を受けた人が、成長してからどのような影響が生ずるのかということについても解説しています。そして、回復のためのアドバイスも書かれています。(アダルト・チルドレン系です)
この本の後半では、たくさんの体験談が紹介されています。子どものころに祖父からフェラチオを強制された人、十四才のころに毎晩母親と一緒に寝ていて、性交には至らなかったものの、抱き合ったりキスしたりして、夫の代用品として利用されていた人など、いろいろなケースが登場します。このような被害者たちは、大人になってから薬物中毒、セックス中毒、セックス恐怖、人間関係や夫婦関係がうまく行かないなどの、さまざまな心の問題を抱えて苦しんでいるのです。
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Women Who Sexually Abuse Children
From Research to Clinical Practice
by Jacqui Saradjian : in association with Heiga Hanks
1996 John Wiley & Sons Ltd (England) £19.99
ISBN : 0471960721
この本はなかなかの力作です。自分自身の子どもなどに対して、性的いたずらや性的虐待をして、法的な措置を受けた五十人の女性を統計的に細かく分析しています。
まず、女性たちを三つのグループに分けています。子どもが幼いうちから性的いたずらをしていた女性たち(14人)。思春期以降の子どもに性的いたずらをした女性たち(10人)。夫に強制されて自分の子どもに性的いたずらをした女性たち(12人)。そして、この三つのほかに、比較対照群としての普通の女性たち。これらのグループを様々な角度から分析して、その特徴を描き出していきます。
そのほかに、上記のグループに分類できないケースとして、夫と共謀して自分の子どもに性的いたずらをした女性(2)、夫を強制して子どもに性的いたずらをさせた女性(1)、精神病の女性(3)、解離状態のときに性的いたずらをした女性(2)、子どもの性的境界を侵していた女性(3)、悪魔崇拝の儀式に参加して子どもに性的虐待をした女性(4人)、などについても取り上げて、それぞれ問題点を詳しく分析しています。
最後の方で、女性たちへの治療の進め方や、転移や逆転移の問題なども取り上げています。そして、治療がうまくいった三つの事例を紹介しているのですが、読んでいて心が救われるような思いがしました。なかでも、自分の二人の娘を巻き込んで、夫と家庭内乱交をしていた母親が、治療を進めていくうちに、幾重にも重なっていた転移が、ひとつずつ明らかにされていって、やがて、本当の自分に出会うことが出来て立ち直っていく、という事例が非常に印象的でした。
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Mother-Son Incest
The Unthinkable Broken Taboo
An Overview of Findings
著 者:Hani Miletski, M. S. W.
出版社:Safer Society Press
発行日:1999年05月01日 価格:$10.00 ISBN : 1884444318
母親と息子の近親姦に関する文献調査の結果をまとめた本です。極めてたくさんの調査資料の中から、母親が息子に対して行う性的な行為をピックアップしています。調査によって得られた数字や、調査資料の文献リストなどがたくさん記載されていますが、全部で四十ページくらいしかない本ですので、本というよりはパンフレットといった感じです。
全体的に言えることは、かつては極めてまれなケースとされ、精神異常者のやることとされていた母親による性的な虐待は、最近の調査によりますと、これはかなり広く見られる現象ではないかということです。研究者によって数字のばらつきがあるものの、女性による性的虐待は、男性による性的虐待に匹敵するほどの出現率をもつのではないかとも思われますので、今後のさらなる調査研究が必要と思われます。
なかでも、私が非常に興味を持ったのは、男性のレイプ犯に対する調査報告です。なんと彼らの五十九%が、かつて女性から性的ないたずらを受けたことがあるというのです。この数字をみると、もしかしたらレイプ犯は女性によって作られるのではないか、と考えてしまいます。これは私の思いつきでしかありませんが、レイプ犯たちの歪んだ価値観というのは、幼いころに女性から受けた性的な屈辱から来ているのかも知れません。そして、その復讐としてレイプを行い、そうすることで、なんとかして自分の性的な優越感を取り戻そうとしているのではないか…と考えてみると、彼らの逸脱した思考もなんとなく理解できるのです。
とはいうものの、必ずしも女性から性的ないたずらをされた男性のすべてがレイプ犯になるわけではありません。いずれにせよ、さらなる研究が待たれるところです。
末尾には、調査した大量の文献のリストが掲載されています。
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【 境界例と自己愛の障害からの回復 】
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