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精神医療の問題
本の題名をクリックすると、オンライン書店 amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。
救急精神病棟
著  者:野村進
出版社:講談社
発行日:2003年10月01日 価格:¥1,700
 
 精神科の医療というのは、大きく変わろうとしているのだそうです。そういう大きな変革の動きが、いま静かに進行しつつあるのですが、このような日本の改革をリードしている、千葉県精神科医療センターを、著者は三年間にわたって取材して、最先端を行く現場をリアルに描き出しています。
 著者は、医療の現場を描く手法として、架空の研修医である「間宮康一」という人物を作り出して、彼の目を通して病院の内部を描いています。しかし、ほかの病院のスタッフはすべて実名で書かれていて、それぞれが自分の考えを語っているのですが、なかなか個性的な人が多いようです。
 この病院のような、救急医療に重点を置いた精神科の専門病院というのは、精神病を発病の初期段階で集中的に治療して、症状の重症化を防ぎ、短期間のうちにスムーズに社会に復帰させようという主旨で設立されました。そして、充実した救急医療の結果として、一般の精神病院における入院患者数を、全体的に減らそうというのです。こういった目的のために、病院ではさまざまな工夫をしていて、ひとつの理想的な救急医療のあり方を示してるのです。ですから、国内からだけではなくて、外国からも視察に訪れる人が多いのです。
 この本では、最先端の現場を描くだけではなくて、日本の精神医療がたどってきた暗い歴史についても、分かりやすく解説しています。ロボトミー手術の事件や、電気ショックに関する無知に基づいた歪んだ報道なども取り上げています。
 患者たちの多彩な症状もたくさん描かれていて、非常に興味深く読める本になっていますので、精神医療の現在と過去、そして未来について考えるのに良い本ではないかと思います。
 ただし、人格障害を救急医療の対象とはしない方針の計見氏の考えに、私は反対します。この本の終わりのほうに登場します、大阪にある精神科救急病院の澤氏は、人格障害も救急だけはいったん受け入れているそうですので、こういう人が増えてくれることを願っています。
 この本の舞台となった、千葉県精神科医療センターのHP↓
  http://www.pref.chiba.jp/byouin/seisin/


精神科医はいらない
著  者:下田治美
出版社:角川書店
発行日:2001年12月01日 価格:¥1,200
 
 著者は、小説「愛を乞うひと」の作者でもあります。この著者が、自分自身の十年間におよぶうつ病の体験や、薬漬けにされた友人たちの体験談などを通して、無能な精神科医たちに対する不信感を訴えています。さらに、著者自身のヤマギシ会での洗脳体験や、ある日突然原稿が書けなくなってしまった、分裂症状の体験などについても書いています。
 そして、なんと言ってもこの本のスゴイところは、町沢静夫と斎藤環に噛みついて、徹底的に反論・罵倒している部分でしょう。まず町沢静夫の発言を一つずつ取り上げて反論して、さらに町沢静夫の違法行為を指摘しているのです。そして最後には、町沢静夫は自己愛性人格障害であると診断しているのです。私自身も町沢静夫の噂は聞いていますので、フムフムと思いながら読んでいましたが、それにしても著者のキレ方がちょっと心配になりました。
 続いて著者は、週刊文春に掲載された、引きこもりに関する斎藤環の文章をやり玉にあげて罵倒しているのです。「臨床的な眼識が欠落しているのではないだろうか」「子供じみた万能感の保持者」「天下国家を憂うまえに、本業(高度な知識と技術力)を研鑽する方が先じゃないかしらね」「あら、治すって、ひょっとしたら、むりやり外に引きずりだして学校に行かせること? それが治療? 社会のシステムに疑問をはさまず、子羊のようにおとなしく順応させることが治療なの?」。さらには、精神科医や心理学者、友人知人などを動員して、斎藤環に反論しているのです。しかし、反論している人たちは、どうやら引きこもりの実態をまったく知らないままに反論しているようなのです。斎藤環が書いた「社会的引きこもり」を読んだことのある人や、引きこもりの問題と取り組んでいる人たちにとっては、あ然とするようなことが書かれているのです。
 この本の後半の部分は、著者の心の状態が心配になってくるような内容ですので、著者のファンで精神医学の知識のある人は、この本を読むと失望することでしょう。
 さて、斎藤環はここまで言われて黙っているのでしょうか。


子供部屋に入れない親たち
  精神障害者の移送現場から
著  者:押川剛
出版社:幻冬舎
発行日:2001年 1月 1日 価格:¥1,500-
 
 この本は、精神障害者を病院に連れていく、「移送」という仕事について書いた本です。
 精神障害者の移送というと、現状では拘束して強制的に連れていくというやり方が行われているのですが、著者はあくまでも患者を説得して、本人の同意を得た上での移送を原則としているのです。しかし、この仕事を始めた当初は、まだまったくノウハウがなかったために、どうしたら本人が納得するのかが分からずに、しばらくは手探りの状態が続きました。その後、たくさんの移送経験を積んで、著者は一人でそのノウハウを築き上げていったのです。このことはつまり、訓練を受けた人が移送を行えば、拘束の必要はなくなるということなのです。著者の成し遂げた「同意の上での移送」という画期的な手法は、精神医療の暗闇の部分に光を当てたという点で、高く評価されるべきだと思います。
 部屋に閉じこもった精神障害者のところへ、ドアをこじ開けて踏み込んでいくとき、部屋の中のあまりにも凄まじい光景に、読んでいてショックを受けます。さらに、家族の人たちの反応などから、精神障害者たちが育ってきた「家庭」の、生々しい現場が見えてくるのです。
 終わりの方で、有名な某精神科医の非常に不適切な言動のことや、やたらに人権を叫んで著者を糾弾しようとする人たちのことが書かれています。これも、精神医療をとりまく現実の一面であると言えるでしょう。
 現在の移送制度は、患者の人権と言う点で非常に大きな問題を抱えていますが、この本がきっかけとなって、少しずつ状況が改善されていくことを期待します。


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