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性虐待−男性被害者
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そして、すべてのジャニーズタレントへ
著 者:木山将吾
出版社:鹿砦社
発行日:2005年 3月20日 価格:¥1,200- ISBN : 4846305910
この本は、かつてジャニーズ事務所に所属していたタレントである著者が事務所で体験した、同性による性的虐待の様子が詳しく書かれています。
著者は十五歳でジャニーズ事務所に入りました。そして、光GENJIのメンバーとしてデビューする予定だったのですが、性行為に従順ではなくなったために、デビュー前に外されてしまったのです。
著者はその間、社長であるジャニー喜多川氏の愛人として、さまざま性行為をさせられてきました。初めてジャニー事務所の合宿所に行ったときに、喜多川氏によって行われた「泡風呂の儀式」、大部屋でタレントの卵たちが順番に喜多川氏からされるフェラチオの儀式、そして喜多川氏が著者と行ったアナルセックスについても具体的に書かれています。芸能界デビューという甘い誘いを餌に、少年たちの性が食い物にされている実体を暴いています。
有名なタレントたちの性的な面も具体的に書かれていて、たいへん興味深く読めるのですが、ここに書かれていることが本当であれば、これは性犯罪そのものです。なぜ警察が動かないのか不思議ですが、ここに男性被害者に対する偏見の一端を見る思いがします。もしこのような扱いを受けているのが少年たちではなくて、少女だったら世間はどう反応するでしょうか。
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ぼくの話を聞いてほしい
児童性的虐待からの再生 講談社+α文庫Y838
著 者:クリスティアン・D・イェンセン
出版社:講談社
発行日:2004年12月20日 価格:¥838- ISBN : 4062568969
この本は、デンマーク人である著者が少年のころに受けた性的虐待について書いた体験談です。
著者は九歳の時に、三十歳の独身の男性と仲良くなったのですが、彼はもっぱら少年を相手にする小児性愛者だったのです。著者は夜に裸で彼と同じベッドで寝て、彼のオナニーの手伝いをさせられます。著者自身も彼からペニスをいじられてオーガズムを体験させられます。しかし、著者は彼との性行為が嫌で嫌で、さまざまな抵抗を試みるのですが、結局三年間に渡って自分の身体を利用されることになったのです。
この男との関係を両親に告白することで虐待は終わったのですが、その後も性的虐待の影響は色濃く残って、さまざまな症状が出現するのです。そして、著者は堪えがたい不安感を解消するために、行きずりの女性たちと手当たり次第にセックスしていったのです。
やがて著者は自分の抱えている問題の深刻さに気付いて、加害者の男性を警察に告発して裁判に持ち込んだり、セラピストから精神分析的な治療を受けたりします。治療の過程で、著者は自分の過去を振り返り、少年のころに受けた性的虐待が、いかに大きく人生を支配していたのかということを、少しずつ理解して行くのです。そして、本当の自分を少しずつ取り戻して行くのです。
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少年への性的虐待
男性被害者の心的外傷と精神分析治療
著 者:リチャード・B・ガートナー
出版社:作品社
発行日:2005年 3月10日 価格:¥3,800 ISBN : 4861820138
少年のころに性的な虐待を受けたことのある男性に対する、精神分析的な手法による治療と回復について書かれています。アメリカでも高い評価を得ている本です。
この本は専門書です。読者対象としては男性被害者の治療に携わっている専門家の方たちや、ある程度の知的な理解力を持った人たちを想定して書かれています。
内容的には、非常に優れたものになっていまして、翻訳者も書いているのですが、ただ単に少年への性的虐待の問題だけではなくて、ジェンダー、セクシャリティ、再男性化、心的外傷、解離、精神分析療法のありかた、などについて最新の理論が紹介されていて、まさに目からウロコが落ちるような思いがします。ですので、他の分野の人が読んでも、この本から得るものが大きいのではないかと思います。
少年のころに、母親や他の女性たちから性的な虐待を受けた男性と、父親や他の男性たちから性的な虐待を受けた男性の、それぞれの精神的な問題を扱っています。男が被害者になるはずがないという社会的な偏見の問題。男性の被害者と女性被害者にみられる共通点と、決定的な違い。大人の女性から性行為をされることで、自分の男性性に疑いを持ってしまう問題。男から性行為をされることで、同性愛になってしまうのではないかという恐怖を抱いてしまう問題。そして、性的虐待を受けたことと、同性愛指向とは別の問題であるということ。心的外傷と、多重自己の問題。人間関係での親密性の問題や、激しい怒りの問題。こういった問題について、深い洞察と、最新の考え方が書かれています。
著者は百名にのぼる患者を治療した経験から、具体的な事例をあげながら解説しています。虐待場面でのおぞましいような性行為の内容も書かれていますので、虐待を体験した人は、過去の記憶が生々しくよみがえってくるかも知れませんし、分析的な説明によって新たな自己洞察を得られるかも知れません。専門家のみなさんにとっても、治療に際して直面するさまざまな問題について、事例をあげながら具体的に詳しく論じられていますので、非常に参考になるはずです。分厚い本ですが、専門家のみなさんや男性被害者のみなさんに、ぜひ一読をお勧めします。
原書名:Betrayed As Boys
なお、近いうちに、一般向けに書かれた本がアメリカで出版される予定です。
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Beyond Betrayal
Taking Charge Of Your Life After Boyhood Sexual Abuse
著 者:Richard B. Gartner
出版社:John Wiley & Sons Inc.
発行日:2005年 価格:$24.95 ISBN : 0471619108
この本は、少年のころに性的虐待を受けたとこのある男性被害者について書かれた一般向けの本です。
加害者には、男性が加害者となるケースと、女性が加害者となるケースがあります。私は最初、加害者の性別が違うと内容もかなり違ってくるので、別の本として分けて書いた方がいいのではないかと思ったのですが、読んでみると、異なっているとは言え、違った角度からの自己洞察を得ることが出来ましたので、結果的には大変良かったです。
今まで、男性被害者の問題は正面から取りあげられることがあまりなかったので、もしこの本が翻訳されたら、日本でも注目されることになるでしょうし、この分野に対して影響を与えることになると思います。
一般には、そもそも男性が性的な被害者になるはずがないとか、女性が加害者になるはずがないとか言った、間違った神話があるようですが、この本ではこれらの神話について実例を挙げながらひとつずつ否定していきます。そして、男性被害者が抱える特有の問題として、男らしさの問題を取りあげていきます。もし女性がレイプされても、自分が女性であることを疑うことはないのですが、男性がレイプされたときには、自分が女性のような扱いを受けたことによって、自分が男であることへの疑いが生じてくるのです。自分は男ではなくて女性にされてしまったのだろうかという疑問と、自分はゲイになってしまったのだろうかという恐怖感にとらわれるのです。そして、男は男らしくあらねばならないという社会的な役割に適応できずに、さまざまな心の問題を抱えることになるのです。
それと同時に、親やほかの大人から、自分の身体が利用されて搾取されてしまったという、深刻な「裏切り」から来る不信感。親密な人間関係を作ることが出来なくなってしまう問題。少年のころの体験と向き合うことが出来ずに、薬物に手を出したり、同性や異性との見境のない性行為を繰り返したりする問題。忌まわしい過去の体験を解離させることで環境に適応しようとする問題など、いろいろな問題が取りあげられています。
精神分析「的」な視点から書かれているのですが、難しい理論のようなものはまったくありません。虐待の具体的な内容や、その後の影響などについて、たくさんの事例が書かれていますので、虐待された過去を持つ人にとっては、自分と重なる部分を見いだすことになるでしょう。
内面的な洞察に優れたものがあるのですが、やはりこの問題は根が深いものがありますので、本の終わりの方では治療を受けることを勧めています。
(この本の著者は、専門家向けに上記の「少年への性的虐待」という本を書いています)
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Come Here
A Man Overcomes the Tragic Aftermath of Childhood Sexual Abuse
著 者:Richard Berendzen and Laura Palmer
出版社:Random House Inc. Villard Books
発行日:1993年 価格:¥-- ISBN : 067941777x
著者のRichard Berendzen 氏は、テレビのニュース番組に宇宙関係の解説者としてときどき登場する、アメリカでは有名な天文学者です。
しかし、著者には少年のころに性的虐待を受けた体験があったのです。八歳のころに両親の性行為を目撃し、そのとき母親から「 Come here 」と言われて、三人での性行為をさせられました。十一歳のころに、またもや母親から「 Come here 」と言われて二人でセックスをしました。そして、その後数ヶ月間にわたって断続的に母親と性交をさせられたのです。
母親との性行為は突然理由もなく一方的に終わったのですが、著者はその後勉学に励み、天文学者になります。やがてアメリカン大学の総長となり、大学の経営を立て直し、教育のレベルを高め、優れた大学へと改革していったのです。
ある日、父親の葬儀で帰郷したとき、突然過去の記憶がよみがえってきてパニックになりました。そして、この時から少しずつ精神のバランスが崩れていったのです。やがて著者は大学の執務室から、たびたび匿名のワイセツ電話をするようになり、警察もこの電話の発信源を調べ始めました。そして、警察の動きを知った大学の理事たちに追求されて、著者は事実を認めました。そして、外部には本当の理由を伏せたまま、突然大学を辞任することになったのです。有名人の不自然な辞任に周囲は騒然となり、マスコミが大きく取りあげました。
著者は世間から身を隠し、ジョンホプキンス大学の精神科に入院して治療を受けます。そして、そこでは過去のトラウマを直視するように迫られたのです。しかし治療を受けている間に、マスコミが辞任劇の真相をかぎつけ、大々的にスクープしたのです。これで著者は地位も名誉も、生きて行く希望も失い、精神的に破滅的な状態に陥って行きます。
しかし、著者はここから這い上がって行ったのです。泣いたり叫んだりしながら、繰り返し、繰り返し、性的虐待の体験と向き合い、自分の惨めさや傷つきやすさと向き合い、絶望感と格闘し、やがて生きて行くために必要な「希望」を少しずつ手に入れてゆくのです。
やがて著者は、マスコミが注目する中で裁判に出席して判決を受けます。かつて出演していたニュース番組にも潔く出演して、自分の行為を謝罪し、少年のころに性的虐待を受けたことを告白し、治療について説明します。その後、鬱状態が戻って来て苦しんだりしたのですが、やがてそれも回復してきて、NASAの宇宙計画の作成に携わったり、子供の虐待の問題と取り組んだりします。そして、念願だった大学の教壇へも戻り、かつて出演していたニュース番組にも、以前のように解説者として出演するようになったのです。
この本を読んで感じることは、ワイセツ電話という不祥事にもかかわらず、奥さんや子どもたちが全面的に著者を信頼しているという、その信頼関係の素晴らしさです。著者が窮地に陥っているときに、家族の人たちから幾度となく「I am with you.」という言葉が出てくるのです。そして、このような恵まれた支持的な人間関係もさることながら、著者が自分と向き合ってゆく、その真摯な勇気にも感動しました。この本を読みながら、私は幾度となく涙を流しました。
古い本で、アメリカでも絶版になっているようなのですが、優れた内容だったので紹介しました。入手は今のところ古本のみになります。
wikipediaに掲載されている著者の紹介ページ。
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【 境界例と自己愛の障害からの回復 】
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