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性的虐待からの回復
本の題名をクリックすると、オンライン書店 Amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。
 
少年への性的虐待
  男性被害者の心的外傷と精神分析治療
著  者:リチャード・B・ガートナー
出版社:作品社
発行日:2005年 3月10日 価格:¥3,800 ISBN : 4861820138
 
 少年のころに性的な虐待を受けたことのある男性に対する、精神分析的な手法による治療と回復について書かれています。アメリカでも高い評価を得ている本です。
 この本は専門書です。読者対象としては男性被害者の治療に携わっている専門家の方たちや、ある程度の知的な理解力を持った人たちを想定して書かれています。
 内容的には、非常に優れたものになっていまして、翻訳者も書いているのですが、ただ単に少年への性的虐待の問題だけではなくて、ジェンダー、セクシャリティ、再男性化、心的外傷、解離、精神分析療法のありかた、などについて最新の理論が紹介されていて、まさに目からウロコが落ちるような思いがします。ですので、他の分野の人が読んでも、この本から得るものが大きいのではないかと思います。
 少年のころに、母親や他の女性たちから性的な虐待を受けた男性と、父親や他の男性たちから性的な虐待を受けた男性の、それぞれの精神的な問題を扱っています。男が被害者になるはずがないという社会的な偏見の問題。男性の被害者と女性被害者にみられる共通点と、決定的な違い。大人の女性から性行為をされることで、自分の男性性に疑いを持ってしまう問題。男から性行為をされることで、同性愛になってしまうのではないかという恐怖を抱いてしまう問題。そして、性的虐待を受けたことと、同性愛指向とは別の問題であるということ。心的外傷と、多重自己の問題。人間関係での親密性の問題や、激しい怒りの問題。こういった問題について、深い洞察と、最新の考え方が書かれています。
 著者は百名にのぼる患者を治療した経験から、具体的な事例をあげながら解説しています。虐待場面でのおぞましいような性行為の内容も書かれていますので、虐待を体験した人は、過去の記憶が生々しくよみがえってくるかも知れませんし、分析的な説明によって新たな自己洞察を得られるかも知れません。専門家のみなさんにとっても、治療に際して直面するさまざまな問題について、事例をあげながら具体的に詳しく論じられていますので、非常に参考になるはずです。分厚い本ですが、専門家のみなさんや男性被害者のみなさんに、ぜひ一読をお勧めします。
 原書名:Betrayed As Boys
 なお、近いうちに、一般向けに書かれた本がアメリカで出版される予定です。


 
性的虐待を受けた人の
ポジティブ・セックス・ガイド

著  者:ステイシー・ヘインズ
出版社:明石書店
発行日:2001年10月30日 価格:¥2,500 ISBN : 4750314854
 
 私としては、この本はあまりお勧めできないのですが、性を肯定的にとらえるという意味では、多少は参考になるのではないかと思います。
 なぜお勧めできないかというと、性的虐待によって生じる問題や、セックスセラピーについて一通りの表面的な解説は書かれているものの、全体的に性的な行動化を奨励するような内容だからです。SMプレイの勧め、バイブレーターや、アナルグッズの使い方の説明、フェラチオのやり方、肛門性交のやり方、マスターベーションのやり方、エロ本やテレホンセックスの利用、などと何でありです。性的な境界を設定する必要も書かれていますが、境界が必要なのは著者自身ではないかと思います。このような混沌とした状態は、虐待を受けた人の混沌とした状態そのものですが、著者にとっては怖いものなしです。
 しかし、この本ではいろいろな性行動をごちゃ混ぜにしたまま、非常に肯定的に扱っていますので、自分の性を肯定的にとらえることのできない人にとっては、ある意味で参考になるのではないかと思います。それに、この分野のほかの本を真似て書いたような解説もいろいろと書かれていますので、この分野について知らない人は、こういったことも、それなりに参考になると思います。それに、タントラだとか、聖なるマスターベーションだとかについても書かれていますので、カルト系の人にはこういうのが歓迎されるかもしれません。
 正統派の本がたくさんある中で、色物のひとつとしてこの本があるのならいいのですが……。性的な回復の問題に焦点を当てた、もっとちゃんとした本が早く翻訳されるといいなぁと思います。


The Sexual Healing Journey
  A Guide for Survivors of Sexual Abuse
Author : Wendy Maltz
Publisher : Harpercollins
1991/02 ISBN:0060959649 $14.00
 
 近親姦やレイプなどの、性的な虐待を受けた人たちが抱える「性的な回復」の問題について書かれた本です。過去の体験によって、さまざまな性の問題を抱えた人たちが、やがて健全な性欲を取り戻し、健全な性行為による、健全な性の歓びが得られるようになることを目指して、その具体的な方法を、詳しく解説しています。
 この本はアメリカではロングセラーになっているのですが、一般的なセックスセラピーと明らかに違う点は、近親姦や性的虐待などを体験した人たちを対象にしているという点です。
 このような問題を抱えた人たちが、最初にしなければならないことは、過去の体験が、現在の思考と行動にどのような影響を与えているのかという事に気付いていくことです。たとえば、夫婦でセックスをしているときに、途中で突然パニックになったり、体が急に冷たく感じる冷感症という症状が出たり、不感症や、一方的に体を利用されているという不快感、性的な嫌悪感、男性の場合には、早漏やインポなどの様々な症状が出たりします。
 ほかにも、過剰なオナニー、ポルノ中毒、誰とでもセックスしたり、危険な性行為に夢中になったり、歪んだセックスの空想にふけったり、あるいはセックスを嫌って避けたり、ときには人間関係そのものを避けて社会的に孤立したりすることもあります。そして、過去の体験が影響しているのだと気付かないままに、自分は駄目な人間なんだと思いこんでいたりすることもありますので、無意識的な面も含めて、過去と現在のつながりを意識することが必要になります。
 この本では、多数の事例から抽出したチェックリストが掲載されていますので、自分のどこに問題があるのかを自分でチェックしてみることが出来ます。
 次に、この本では性的に歪んだ思考パターンと、健全な性の考え方とを並べて書いて、どこがどう間違っているのかを明らかにしています。そして、読者に対して、歪んだ考え方を修正して、性というものに、新しい意味付けをしていくように促しています。
 最後にこの本では、性的な親密さを取り戻すために、パートナーと二人で出来るエクササイズを、図入りで解説しています。
 全体的に、体験者の生の声がたくさん引用されていますので、同じような過去を持っている人は、共感しながら読んでいけるのではないかと思います。また、パートナーの人たちにとっても、どのようにして支えていったらいいのかということが書かれていますので、いろいろと参考になるのではないかと思います。


 
セックスレスの精神医学
  ちくま新書489
著  者:阿部輝夫
出版社:筑摩書房
発行日:2004年09月10日 価格:¥680 ISBN : 4480061894
 
 いまセックスレスのカップルが増えていて、なかでも男性の性嫌悪症が、かつて例を見なかったくらいに増えているのだそうです。
 この本では、まず男性の性欲低下の原因について、いくつかのパターンに分類して、それぞれわかりやすい事例をあげながら解説しています。ほかにも勃起障害(ED)や、オナニーでは射精できるのに、性交時に射精できない膣内射精障害についても解説しています。
 女性の場合についても、性嫌悪症や、性交疼痛症、膣痙攣などいろいろなケースについて解説しています。
 最後に、セックスレスの治療方法として、カップルで受けるセックス・セラピーに関する解説が具体的に書かれています。また、早漏や膣内射精障害についても、その治療方法を具体的に説明しています。
 日本におけるセックス・セラピーの第一人者が書いた本ですので、事例が豊富で、わかりやすい解説書になっています。


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