本の紹介
 
境界例・人格障害
(一般向)

境界例・人格障害
(専門書)

精神分析(一般向)
精神分析(専門書)
乳幼児精神医学
カウンセラーになる
 
リストカット
引きこもり
摂食障害
虐 待
依存症
うつ病と自殺
統合失調症
妄 想
その他の障害
メンタルヘルス
 
近親相姦・性的虐待
心理的な近親姦
性的虐待をする女性
性的虐待からの回復
性虐待−男性被害者
 
性的嗜好と逸脱
性的な依存症
売春
 
神戸連続児童殺傷事件
精神医療の問題
医療問題
 
その他の本

ホーム > 本の紹介 > 乳幼児精神医学

 
乳幼児精神医学
本の題名をクリックすると、オンライン書店 Amazon.co.jp の、その本の紹介ページに行きます。
抱きしめてあげて
  育てなおしの心育て
著  者:渡辺久子
出版社:彩古書房
発行日:1988年09月01日 価格:¥1,300- ISBN : 4915612244

 児童精神科医である著者が、普段の診察の中で出会った患者たちの例をあげながら、子どもにとって「だっこ」されることがいかに重要であるかということを、分かりやすく解説しています。心の問題を抱えた子どもたちが、母親にだっこされて、好きなだけ甘えることで、心の障害が消えて行くのです。著者は、だっこされることの意味やその重要性、心の問題が世代をこえて伝達されていくこと、子どもが精神的に成長して行くプロセスなどについて、分かりやすく解説しています。
 この本は、育ちそこなった自分の過去を振り返ってみるのに、大変いい本です。私も、幼いころの自分を、「だっこされる」という視点から振り返ってみて、涙があふれて来ました。書かれているたくさんの症例を通して、自分の過去がだぶって見えてくるのです。そういう意味で、自分をもう一度育て直すための参考書として、ためになる本ではないかと思います。
 もちろんこの本は子育てで悩んでいる親にとっても、子どもとの関係を見直してみるのに、非常に有意義な本でありますし、また、これから親になる人たちにとっても、心の育児書としてぜひお奨めします。


乳幼児精神保健の新しい風 ( 別冊「発達」NO.24 )
  子どもと親の心を支える臨床の最前線
編  集:渡辺久子・橋本洋子
出版社:ミネルヴァ書房
発行日:2001年12月01日 価格:¥2,400- ISBN : 4623031659

 この本は一応専門書です。
 近年、乳幼児精神医学がめざましい進歩を遂げていますが、その最新の知見について、各分野の専門家たちが分かりやすく解説しています。
 まず理論的な解説として、愛着理論や世代間伝達の問題、愛着理論に基づいた自閉症治療、ウィニコットの言う「だっこ」の意味、マタニティブルーと産後うつ病の見分け方、などについて説明しています。
 後半の臨床編では、出産後うつ病になった母親のケアのあり方、未熟児に対するカンガルーケアの方法とその効果、赤ちゃんが亡くなったときや、障害を持って生まれてきたときの母親への告知の問題と支援のあり方、思春期の心の問題と乳幼児期の関連性、などについて解説しています。そして、最後に渡辺久子によるスーパービジョンが二件紹介されています。
 興味深かったのは、未熟児を胸の素肌で抱くというカンガルーケアです。未熟児の場合には、生まれてからしばらくの間は母親から隔離されて保育器に入れられてしまうために、母親が赤ちゃんに対して愛着を持ちにくいという問題がありました。しかし、母親や父親がカンガルーのように、素肌で直に赤ちゃんを抱くことで、赤ちゃんへの愛着が生まれて、親としての自覚が育まれてゆくのです。このカンガルーケアは、正常な新生児の場合にも、実験で効果が認められたようですので、今後のさらなる研究と、その普及に期待したいと思います。



母子臨床と世代間伝達 
編  集:渡辺久子
出版社:金剛出版
発行日:2002年05月日 価格:¥3,600- ISBN : 4772406395

 この本は、日本における乳幼児精神医学の第一人者である渡辺久子が、いろいろな専門雑誌に寄稿した文章を、ひとつにまとめて本にしたものです。
 問題を抱えた赤ちゃんや子供を診ていくと、どういうわけかお母さんがかつて赤ちゃんだったころの未解決の心の問題が、そのまま赤ちゃんによって再現されていることが明らかになっていくのです。このようにして、心の問題が世代をこえて、伝達されていくのです。しかし、治療的な介入によって、赤ちゃんの問題と、母親の心の問題が連動していることに気付かせていって、母親の未解決の問題を処理していくと、まるで魔法を使っているかのように、みるみる親子関係改善していって、赤ちゃんも驚くほど急速に回復していくのです。
 この本では、たくさんの症例を取り上げながら、心の問題が世代をこえて伝わっていく仕組みを解説しています。そして、問題を解決していく技法や、専門家が注意しなければならないことなども書かれています。また、患者とのやりとりなどが書かれていますので、その言葉の選び方などが、セラピストにとって臨床の参考になるのではないかと思います。
 この本を読んでいると、渡辺久子が問題の本質を見抜いていく、その勘の良さに感心してしまうのですが、それと同時に、私自身の親子関係を振り返って、問題の本質がどこにあるのかを考えるうえで、おおいに参考になりました。ですのでこの本は、乳幼児や子供の治療にかかわっている人だけではなくて、一般のセラピストにとっても、日々のカウンセリングの参考になると思いますし、また、境界例の人にとっても、ちょっと専門用語が出てきたりはしますが、取り上げられている症例などから、自分の過去を「しみじみと」振り返ってみるのに、参考になるのではないかと思います。また、親のみなさんにとっても、親子関係の問題を「素直な気持ちで」振り返ってみるのに、いい本ではないかと思います。
 一般向けに書かれた本ではないのですが、専門用語もそのつど解説されていて、全体的に分かりやすく書かれていますので、みなさんにも購読をおすすめします。



ホーム > 本の紹介 > 乳幼児精神医学

【 境界例と自己愛の障害からの回復 】